「医療格差」とは、医療サービスを受けるときに起こる様々な格差のことをいう。本来であれば全員が平等に受けるべきであるのに、医療を受ける機会や、質や量において差が出ることにより、体や心の健康を保てない人が出てしまうという問題である。この医療格差の問題は世界全体で起こっており、その原因は国や地域によって様々ではあるが、被害に遭うのはほとんどが、開発途上国など弱い立場にある人々である。このような国では高度な医療サービスを受けにくいため、生後28日未満の乳幼児や、出産時に母親が死亡する率が先進国よりも高い。また、予防接種を受けられない子供が多いため、エイズやマラリアなどの伝染病や、エボラ出血熱などの感染症も流行しやすい。
一方で、先進国でも医療格差が発生している。しかしその理由は途上国とは異なり、公的医療保険制度を支えている財政にある。例えばアメリカでは、公的医療保険制度があまり整っておらず、民間の医療保険に頼らなければならない状態にあり、経済的に余裕がない層の人々は高額な保険料が払えないため病院にかかることができない、ということが増えているのだ。
では日本での医療格差はどうなのかというと、また異なる問題が起きている。日本では、医療機関が都市部に集中する傾向があり、地方など交通アクセスが不十分なところに住んでいる人々は、医療サービスを受けるのが大変なのである。健康保険制度などさまざまな補助制度は整えられているのに、住んでいる場所によって受けられる医療のレベルに差があり、専門的な医療を受けるには都心部まで出向かなくてはならないという点は、今後の日本の医療における課題だといえる。